同人誌情報
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【博麗神社秋季例大祭2】
厄塊者の小夜曲
厄塊者の小夜曲
とらのあな様(特設)
メロンブックス様

 

【砲雷撃戦6&軍令部酒保】
霜柱
霜柱
とらのあな様(特設)
メロンブックス様

 

【東方紅楼夢9】
雷鼓さんと遊ぼう♪
雷鼓さんと遊ぼう
とらのあな様(特設)
メロンブックス様(特設)
メロンブックスDL様

 

【C84】
RYUJOU!! RYUJOU!!
RYUJOU!! RYUJOU!!
とらのあな様
メロンブックス様

 

【C84】
SENPAI&KAWASHIRO Vol.3
ANARCHY
とらのあな様
メロンブックス様
メロンブックスDL様

 

【第10回例大祭】
合同誌「ANARCHY」
ANARCHY
とらのあな様
メ ロンブックス様

 

【第10回例大祭】
「石の魚」
石の魚
メロンブックス様
メロンブックスDL様

 

【C83】
HENTAI GIRLS TALK
HENTAI GIRLS TALK
とらのあな様
メロンブックスDL様



【メロンブックス様DL販売集】

華扇ちゃんがメイド服着てエロい事してる本
華扇ちゃんがメイド服着て
エロい事してる本

 

DIET失敗華扇ちゃん
DIET失敗華扇ちゃん

 

蕗の芽吹く頃に
蕗の芽吹く頃に

 

SENPAI&KAWASHIRO
SENPAI&KAWASHIRO Vol.2

 

SENPAI&KAWASHIRO
病葉

 

酒宴は桜の木の下で
酒宴は桜の木の下で

 

SENPAI&KAWASHIRO
SENPAI&KAWASHIRO Vol.1

 

しんきんぐたいむ
しんきんぐたいむ

 

茨百花
茨百花

 

花のピアス
花のピアス

 

殺したい男ができました
殺(け)したい男(ひと)が出来ました。

 

hyousi2.jpg
物忌話

 

釣り
釣-とある釣り人の初級編-

 


hyoushi2.jpg
妖桃源のあとしまつ

 


妖桃源
妖桃源

 


嘘吐き
嘘吐き<無料!>

 


Flagbreak.jpg
Flag Break<無料!>

 

 

【販売終了品】

 

【C77】
空繰
karakuri


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と、いうわけで久々の更新:SS「涼を求めて」

ヤバドゥ! ヤバドゥ! ヤバドゥ!

夏コミお疲れ様という前に1ヶ月過ぎようとしてますがいかがでございましょうか。
このへばりついてる生物yamotoですが、やっと涼しくなってきたのでもそもそと活動を始めたようです。


さて、では今回は広告を1つと、そしてSSを一本更新で。

ではまず、広告の方から。

現在左のバーにもありますとおり、華扇ちゃんがドジッ子かつ阿求さんがなんだか辱められる的漫画の、「酒宴は桜の木の下で」とらのあな様メロンブックス様にて委託販売されております。

よろしければごらんくださいませ。とらのあな様では在庫が少なくなっておりますが、おそらく店頭にも並んでおりますので見掛けた際は是非よろしくお願い申し上げます。


さて、お次にSSにつきまして。


こちら、道草さんのシリーズである抱きしめてみた的なアレでございます。


読みたい方はいつもどおり続きを読む的なアレからどうぞお願い申し上げます。



 ある夏の日の昼下がり。
 僕は稗田家に招かれた。
 
 
 
 
 
 ──涼を求めて
 
 
 
 
 
 本来ならば、こんな暑い中出歩きたくはない。
 出来る限り引きこもって店の中で涼を取りたいと強く願っていたのだ。
 そんな中、阿求から送られてきた書簡にこう書かれていたのである。
 
 
『涼を取ると思われる外界の道具が見つかりました。見に来ませんか?』
 
 つまり、あれだ。
 鑑定依頼ということである。
 
 僕のこの能力は本来そう言う用途に使われるモノであるし、人選としては実に正しい。
 
 外界の道具ということであれば、八坂神社の巫女でも構わないのだろう。

 しかし、彼女は道具に関して万能というわけではない。
 何度か来店した際、道具で知らないものも幾つかあったのだ。
 外界はどうやら道具がそれこそ八百万の如く生み出されては消えていくらしく、彼女の理解を超える道具も存在するという。
 
 その点僕は能力があり、古道具屋であるが故の実績が存在する。
 
 使い方を予測し実際にいくつもの道具が動いていることからしても、これは僕に任せた方が良い仕事だと判断したのだろう。
 
 ──万一それで動かない場合、招くこと自体全くの無駄になるのではないか?
 と、思うのが素人考えである。
 
 阿求はそのあたり抜け目がない。
 彼女は常日頃から様々な『良い物』に囲まれている。
 美意識がもたらす価値をちゃんと理解している。
 
 つまり、僕が使いこなせなくても、店に並べれば売れると踏んでいるのだ。
 そのため僕を招く手間、書簡を送る手間を含めて考えても充分に彼女に得があるということである。

 僕の商才もしっかり計算に入れてるあたり実に有能だ。流石は人里の意見役であり、稗田家の当主であると言えよう。
 
 あの性格でなければ、商売について何枚か噛んで貰うことも吝かではないのだが、それはさておき。
 
 実際それだけの理由で足を運ぶ義理などないのだが、涼を取るらしい、というあたりがひっかかった。もしかするとこの状況を変えるだけの力を持っている道具かも知れない。
 
 実際の話、人里よりここは涼しいのだが、あくまでも対比でしかない。
 殺人的ともいえる今日びの太陽の働き自体は変わらないのだ。
 
 このままではどこか鍾乳洞でも探して涼みに行くなんて事をやらかしかねない。
 それは店としてはあまりよろしくない。
 
 この猛暑を乗り越える手段がそこにあるのなら、足を運ぶ理由に十二分になりうる。
 もし使い方がその場で解っていても黙っていればいい話だ。
 
 と、いうわけで、僕は休業の看板をドアに引っかけ稗田家へと向かっていった。
 
 
 
 
 
 結論から言おう。
 騙された。
 
 ああ、それはもう全力で騙された。
 
 天からは太陽の強烈な光が突き刺すように身を焼いてきており、地面は陽炎が立つほどに熱されている。そんな中、何が物珍しいのか人の列がひたすら彼方まで続いていた。
 
 天地人、全てにおいて僕の敵となっているという珍しい光景だ。
 
 そしてその人の群れの先には一件の茶屋があり、そこにはノボリが立っていた。
 ノボリには青地にでかでかと白抜きの赤字で氷と書いてある。

 これで涼しくなれるほど僕はお目出度い頭の作りなどしていないのだが。
 
 いいからもうすぐにでも帰りたい。
 帰って冷たい井戸水でも頭から被って寝たい。

 そんな願いとも呪いともつかないようなものが頭の中でグルグルと蜷局を巻いている。
 つまりそうとう参っているということだ。

「帰ってもいいかな」

「七度目ですねその言葉。涼しくなれる道具があるんですから、もう少し我慢してください」

「涼しくなれる道具を見たいだけなら順番を飛ばして見に行けばいいじゃないか。それに君の一言でこれぐらいの行列は──」

「そうしないからこそ、楽しめるものがあるのでしょう?」

 僕は隣に立っている相方──麦わら帽子に薄く白いワンピースを纏った稗田家の御当主様に助力を求めるも、全力で拒否されてしまった。
 
 そう。
 騙されたのだ、僕は。
 
 稗田家に赴いた所、玄関で阿求がこの格好で待っており、僕はそのまま外に連れ出されてこの行列の一番後に並ぶハメになった。これは何事かと問うてみたところ、回答はこうである。
 
「里の茶屋でそういう道具が使われた、涼を取るのに最適という素敵なお菓子があるそうなんです」
 
 そう。
 鑑定の依頼ではなかったのである。
 どうやらそういう道具を使った、新しい街の名物菓子を食べに行こうと言っていたらしい。
 
 勘違いさせるような書き方をしていたのは当然わざとなんだろう。
 しかし騙されたとはいえ、そういった名物を見ぬまま帰るのも些か癪な話であるため、一緒に並んで食べに行こうと言ったのは確かに僕だが、この熱気が良くない。
 
 阿求の場合薄着をしているからよい。
 だが僕の場合、そうでもないのだ。
 
 稗田家は曲がりなりにも名家であり、そんなところに薄着をして行くわけがない。

 つまり普段着であるこの服装を馬鹿正直に着ていった所、こんな直射日光に長時間晒されるハメになるとどうだろうか。
 
 当然身体が熱を持ち、冷却のために汗を流すが服がそれを吸って重たくなって疲労を呼び、この暑気と相まって蒸発しての繰り返し。既に僕の中に流す水分などとうになく、立ち続けるだけの気力も無かった。
 
「もう僕はどこか別の所で休んでくる。君だけで並んでくれないか?」

「私一人で並ぶのが不安だから誘ったのですけど?」

 ああ、それもそうか。
 公に稗田を名乗らずに来たのだから、彼女は今現在阿求一個人である。
 
 そして一個人である阿求とは即ちこのような、薄着の格好をした小さな娘でしかない。
 この人の行列の中、うっかりすれば持ち逃げでもされそうなぐらいのものでしかない。

 それならば僕を誘うというのも頷ける話ではある。何しろ僕はよく目立つ。
 こうして横にいるだけで自ずと注目を浴びるので、迂闊な考えの者は近づかないだろう。
 
 だが、暑い。
 
 ハッキリ言って死ぬほど暑い。
 
 上着など脱いでしまおうかと思うが、この下に着こんだインナーウェアはあいにくの黒色だ。黒はあらゆる物を制止するという属性があり、この太陽の輝きも見事に受け止めてしまうというとんでもない罠が待ち受けているため、脱いだが最後、僕は直射日光に焼き殺されてしまう。
 
「ほら、がんばってください。扇子で扇いであげますから」

「焼け石に水と言う言葉を知ってるかい?」

「そこは大河の一滴っていう言葉を思い出して下さい。心が折れてきてませんか?」

「今すぐにその大河に連れて行ってくれ。川の流れに身を任せて心ゆくまで涼みたい」

「完璧に折れてますねこの駄眼鏡。もう少しの辛抱じゃないですか。私より我慢強いはずでしょう?」

「今すぐ僕と服を交換しよう。この苦行がどういう物か心で理解できるから」

「お断りします。主に視覚的意味と、こんな場所で着替えたくないのと、見てるだけで暑いのはわかるので」

 見事に切り替えされるわけであるが、なんとも納得は行かない回答である。
 しかし、本当に暑い。
 
 列がさっきから動いてる気配が無いじゃないか。
 
「一体あと何時間ぐらいかかるんだこれは」

「言っておきますけど、何時間もかかってませんよ。ほら」


 阿求はそう言って、下げた小さな鞄から懐中時計を取り出して見せた。

 おや。
 
 これは僕の店で買ったものではないだろうか?

 阿求には明らかに不釣り合いな男物の懐中時計。
 どうやらデザインが気に入ったらしく、有無を言わさずに買っていった記憶がある。
 
 確かに物としては実に良い物であり、時計職人の技が光る珠玉の逸品であるのだが。彼女には些か大きすぎ、まるで童話「不思議の国のアリス」の三月兎にあるような、ユーモラスなアンバランスさを示していた。
 
 それを可愛らしさと取るかどうかは、人それぞれなのだがあんな小さな鞄に入れるとこの懐中時計以外に入る物はあまりない様に見える。つまり、ある意味専用のケースとして使っているのだろう。
 
 そういう意味では可愛らしく、そして大事に扱って貰っていることを感じさせる。
 商人冥利に尽きるとはこのことだろう。
 
 それはさておき。
 現在、そんな阿求お気に入りの時計が僕に突き付けられているのだが、その針の示す文字は「未ノ刻」である。
 
 なんと驚くことに、僕達が行列に並んでから僅か半刻すらも経っていなかったのである。
 
「実は間接的に僕を殺したいなんて企みではないかな?」

「その気があれば、貴方を座敷牢にでもぶち込みますよ? 失礼な話ですね」

「なにかゾッとすることを言ってくれ」

「そうですね…ううん……。……結婚式はどこにしますか?」


 ──。


 微笑みながら言われたその言葉に、一瞬意識が飛びかけた。

 なるほど。
 例え冗談と解っていても、これは肝が心底冷える。
 おかげで暑気も少し和らいだ気がした。

「……あと一刻は持ちそうだな」

「そうですかお役に立てて嬉しいです」

「では何故足を全力で踏みにじってるのか教えてくれないか」

 意識は蘇ったが、そうされると大変痛いのだ。
 悲鳴こそあげないものの、全体重をかけてサンダルで踏んでくるので中々に深刻なダメージが入り続けている。

「なんでもありません。強いてあげれば冗談と解っていても本気で傷つく事ってあるっていうことを天が教えろと命じている感じなのかもしれません」

「それは気の毒に」

「私としては貴方の頭の方がよっぽど気の毒ですよこの野郎」

「ははは。それはよい冗談だね」

 だから、微笑みながら僕の足を踏み台に地団駄をするのはやめてくれないか。
 
 そうして僕は懸命に踏みつけてくるサンダル攻撃を回避しながら、列に並び続けた。
 太陽はまだ無作為に光をこれでもかと放っていた。






「なるほどね。ああいう菓子だったわけか」

「あれなら評判になるのも解りますね。どうです? 商人として」

「そうだな。手としては十二分にありなんじゃないか?」

 僕は日影になってる道を阿求と歩きながら、そう言葉を返していた。
 確かに、実に面白い菓子だった。
 
 幻想郷において、あれは風習としてまったく伝わっていないものなのだから。
 
「氷を削り取って作る菓子を、冬ではなく夏に出すという当たりが特にね」

 当たり障りのない言葉を口に乗せながら、僕はあることを思い出していた。
 
 まず、あの氷菓子。

 あれは枕草子の中のあてなるもの、すなわち上品なもの、よいものという項目に出てくる『削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に入れたる』との記述そのものの菓子なのである。
 
 要するに、枕草子を知るものならば誰にでも──とは言わないまでも、方法を知り、氷と道具さえ手に入れば簡単に作れてしまう程度のものなのである。
 
 そう、道具と氷さえ揃えて、方法を知れば誰にでも出来るのだ。
 
 つまり?
 
「そういうことじゃありません。自分の店の商品を買い上げた元外界人が、それを使って大儲けする姿はどうですかと聞いて居るんです」

「……君は何が言いたいのかな?」

 ふう、とため息を吐き出す。
 ああ、解ってる。
 
 あそこで勢いよく回り、氷を削り取っていた道具はかつて僕の店に並んでいた商品だったのである。手回し式かき氷機という名前のもので、ハンドルを回すだけで氷が削れるという品だった。
 
 それを買い取ったのが、あの元外界人である茶屋の主人だったわけで。
 僕は枕草子の一節など忘れて売ってしまったのである。

「丁度似たようなものを見かけた気がするんです。貴方の店で」

 少し楽しそうな口調で阿求が言う。
 ああ、阿求もやはり覚えていたか。
 
 そう。
 一度彼女もまた、香霖堂であの品を見ていたのだ。

 その時かき氷機に対する僕の推理としては、冬の氷を削る道具など一部の好事家しか喜ばないだろうし、万一夏に使うとしても鮮魚や果物といったなまものの鮮度をより効率的に保つための道具として使うのだろう──という、その程度のものでしかなかった。
 
 また、実際に商品を興味深げに見ている阿求に説明をした際、彼女は何故か納得しかねると言った様子だったが、僕はそれでも気にしなかった。
 
 結果、宝とも言えるかき氷機をあの茶屋の主人に大変格安で売ってしまったのである。
 
 外の道具ではあるもののそんな用途では実用としても論外と言える品であり、さらにあの道具を見つけたときの彼の喜びようもまた安値にしてしまった理由の一つである。
 
 
 あの時の様子は──まるで我が子でも見つけたような喜びようだったのだ。
 
 
 そこで気付くべきだった。彼女はその元外界人の茶屋を知っていたのだと。
 それを知った上で、彼にかき氷機が店にあると教えたのだと。
 そうでなければ人里の茶屋からわざわざここまで買いに来る理由にならない。
 
「すごく喜んでましたよ。またかき氷を売ることが出来るのは貴方のお陰だと」

「そうかい。人の助けになれたなら何よりだね」

「それが貴方の本音ですか?」

 くすり、と笑う姿が実に小憎らしい。
 明らかにこちらの考えを読んだ上で、神経を突いて遊んでいるのだ。

 ならば少しでも言い返し、場合によっては言い負かす必要がある。
 僕は幾つかの説を同時にまとめ上げ、それを阿求に突き返すことにした。

「商人は金を回すのが仕事だ。あの店の主人はどちらかと言えば職人だろう? なにせあれだけ汗だくになってでも作るぐらいだし、あの値段なら材料費を考えてもそれほど大きな儲けとも言えないんじゃないのかな? 繰り返すがあのかき氷という氷菓子は、氷と削る道具、あとはその上にかける蜜さえ用意できれば誰にでも作れる菓子なんだ。今、物珍しさで売れてはいるものの、アイデアはすでにあるものだから一工夫することで簡単に追い抜ける──いや、むしろもっと斬新で誰も考えたことの無いような氷菓子が出てくるかも知れない。そうなればあの店の行列はそちらに流れ、今のような混雑は二度と起こることはないだろうね。それはこの世に商売が始まって以来、ずっと続いてきた流れだ。永遠に流行し続けるような商品など存在しないのだから」
 
「すみませんが早口で聞こえませんでした。もう一度解りやすく言ってくれませんか?」

 ……。

 突き返された。
 まるで僕の言い方が想定内であったというような仕草で。
 
 ああ、もうこれで確定だ。
 僕の予想が完全に的中していたということである。
 
「阿求。種明かしをしよう」

「はあ、どういう意味ですか?」

「僕を街に呼び出した理由だよ。わざわざ騙し討ちをしてまであの店に連れて行ったのは何故なんだい?」

「それは勿論」

 ──人の話を聞かない貴方への、ちょっとした復讐です。
 
 実に愛らしく笑い、阿求は答えてくれた。
 
 今のこの瞬間こそが目的であったと言わんばかりにその姿は魅力的であり。
 流石の僕も、ここで完全降伏という姿勢を取らざるを得なかった。

「なるほど。随分手の込んだ復讐を受けたものだね」

「貴方の見る目のなさが呼び込んだことでもあるんですけどね?」

 どうぞ、と手を差し伸べてくる阿求。
 僕は言われるままにその手を取る。
 
 僕よりも彼女の体温はどうやら低いらしく、ひんやりとした感触が心地よかった。

 なるほど。やけにすっきりした気分ではある。
 最初から彼女の手の上で踊らされていたわけだ。
 それさえ認めてしまえばこの気分もそう悪くないと思えた。
 
「つまり最初から忠告を聞いておけば、僕は大儲けできたということなんだろうね」

「ええ。枕草子は読んだことがありますし、あの道具自体も貴方の店で見たときピンと来たんです。氷室の場所もいくつか心当たりがありましたし──いつ聞かれるのかと思ってたのですけど」

 一切無駄にしてしまったご感想はありますか?
 その口調はまさに、そう言いたげな様子であった。


「それを一言教えてくれれば済んだ話じゃないのかな?」

「言って聞いてくれる貴方なら、こんな回りくどいことをしなくて済んでるんじゃないですか?」

「まるで掌の上のような言い方だね」

「貴方が分かり易すぎるだけですよ」

 ああ、よく分かった。
 どうして阿求のことを、僕が苦手としているのか。
 つまるところ、彼女は僕の考えをある程度予測できているのだ。
 否。こうして付き合えば付き合うほど、予測できる要素を与えてしまう。
 
 それは僕としては大変面白くないことなのだ。

 しかし、それは子供の考えである。
 
「何でもお見通しと言う訳か。なんとも頼もしいね、君は」

「そう思うなら次から私の言うことを一つ、二つは聞いてくれますか?」

「そうだな──」

 大人になって考えてみれば、この提案は僕にとって得な選択なのだろう。
 何しろ里の意見役の一人であり、その上で僕のことを理解できている貴重な人間なのだから。

 つまり歩み寄るべきは僕からであり、彼女は充分に歩み寄ってきているとも考えられる。それを無下にしているのが僕なのだ。
 
「その前に阿求、そのサンダルだが少し先が欠けて来ているよ」

「えっ? どこですか?」


 いきなりの僕の言葉に、彼女はその場で立ち止まりかがみ込んだ。
 すかさず僕はその背中に回り、背中から抱きつく。
 
 
「──!?」

 
 元々阿求は体温自体あまり高くないのか少しひんやりとしており、小柄な身体はすっぽりと両腕の中に収まった。髪からは上質な……これは椿だろうか? その類の香料の香りがし、手入れを欠かしていないということを示していた。
 
「な…!…なっ…!?…なっ……なっ!?」

「とてもいい抱き心地だね」

「──!? あ、あ、あり……あっ! あっ!?」

 うん。
 どう見ても唐突の事で反応が完全に止まってしまっており、顔はほおずきのように真っ赤に染まって口は酸欠の魚のようにぱくぱくとしていた。
 
 実にあっけないものである。
 まあ、流石に背後から不意打ちで抱きしめるなど、大人のすることではないのだから当然であろう。
 
 その面食らった阿求の姿を十二分に堪能した後、手を放して解放した。
 先程までの大人びた様子など既にどこにもなく、何事かと思いただ慌てて此方を見返すという、ただの小娘と化した阿求が実に面白おかしい。
 僕は腕組みをし、その場に佇む阿求を尻目に歩きながらこう言い放つ。
 
 
「残念だが──この程度の悪戯も見抜けない様ではまだまだ頼るわけにはいかないな?」


 その時に見えた阿求の悔しげな顔はしばらく忘れようもない。
 あれこそ、不意打ちを食らい何も言えなくなった人間の顔というものだ。

 大人げないと言う無かれ。
 人間そうそう簡単に大人になれるというわけではない。
 時には子供のような振る舞いであれ、勝ちを得たいときはあるのである。
 
 第一、相手も用意周到に僕をはめたのだ。
 ここで卑怯卑劣などと罵られる謂われはない。彼女にできるのは次の策を急いで用意して僕を再度陥れることだが、この状況では最早策など意味を為さない。
 
 
 つまり、最後の最後で僕が勝負をひっくり返して勝ったのだ。
 
 実によい気分だ。
 心は快晴の如く澄み渡り、夏の暑さも自ずと去っていく。
 足は軽く、進む道が己のために開けているようなこの感覚。
 
 勝利とは空しいと人は言う。
 しかし、勝利の味とはこのように格別な気分をもたらすのである。
 
 
 
 
 故に、気付かなかった。
 阿求が背後で何をしていたかなど。
 
 
 
 
 
「この──駄眼鏡ぇえええ!!!」

 ゴッ、と鈍い音が一つした。
 それがたまたま近くの店の軒先にあった、やや分厚い目の鉄看板であったことを僕は後に聞いた。当たり所が悪くなくても下手すれば十二分に死ぬようなものを僕の頭目がけて振り下ろしたのである。
 
 
 だが阿求は人間である。
 その上で阿求は華奢で小さな──到底力があるとは思えぬ小娘である。
 その程度で大の大人が簡単に死ぬわけが無いと多くの人間は高をくくるだろう。

 しかし。
 
 人間は時に怒りによって、そんな条理を覆すことができるのだ。
 それは奇跡と呼ばれる類のもの。
 あるいは心が起こした無限の力と言われるもの。
 
 ここに八意女史が居たのなら、人間の力の抑制などについて長々と語ってくれるのであろうがここでは割愛しよう。
 
 何故なら僕は地面に倒れ伏していたし、まだ攻撃は続いていたからである。
 
「駄眼鏡! この駄眼鏡! 駄眼鏡! 駄眼鏡ぇ!!」

 ガっ ガッ ガッ ガッ
 
 きっとこの感触は、あの底の分厚いサンダルなのであろう。
 阿求がいくら軽いとはいえ、サンダルは木製で角が尖っており、しかも長持ちするよう分厚く作られている。その上でいくら華奢とはいえ、阿求の体重は鉄看板など軽く超える程度にはある。
 
 故に全体重をかけて後頭部を踏みつけるこの重さと勢いは、充分に人を殺しうる。
 
 それを理解していないはずもないのだが、どうやらそれを忘れる程度には怒り心頭な状態であらせられるご様子だ。
 
 やれやれ。
 年頃の娘とはやっぱり解らない。
 
 
 
 そう心で呟いて──僕は意識を手放した。
 
 
 
 

「なにそれ、貴方の完全自業自得じゃない」

「そうは言うがね八意女史。僕がやったことなど小さな子供の悪戯に過ぎないだろう? それで殺すような勢いでやるのはどうかと思うんだが」

 その後、思ったよりも重傷だったらしく、意識を失ったまま運び込まれた八意診療所の布団の上で、僕は主である八意女史と向き合って話していた。
 
 どうやら最近、人里で手に負えなくなった重傷の者や、あるいはどう対処して良いか解らない妖怪などを看るための緊急用の病院も兼ねる様になったらしく、薬師であった彼女の身はますます忙しくなっているようである。
 
 条件として、人里で手に負える者に関しては対処を教えお引き取りを願い、療養所としての利用は不可能というあたりの制約を設けているのだが。
 
 逆に言えば、そこに運ばれた時点で人里では手の尽くしようもない重傷であるということに他ならず、危うく僕も死に至る寸前ということであったらしい。
 
 世は常に危険が一杯なのだのだと改めて思い知り、日々の生活への油断を実感したのだがそれはさておき。
 
「大人が小さな子供の真似をしてまで人を騙すのは、明らかにいけないことじゃないかしら? あと、貴方は解ってるかどうか知らないけども『女の子』に対する悪戯でそれはないわー、って私思うんだけど」

「それに関しては反省している。主に前者を」

「後者もよ。あと貴方は別に重傷じゃないから、そろそろベッドを開けてくれるかしら? 常人なら当然死んじゃってるぐらいだけども、貴方ならいつも通りオオサンショウウオ並の生命力でどうにかしちゃうでしょ?」

「頭が割れるように痛いんだが?」

「本当に割れたなら痛いなんて思わないわよ。痛いのは重傷じゃない証拠。そんなに休みたいなら良いところを紹介するけど?」

「それは楽しみだ、どこの診療所だい?」

 きっと人里の診療所あたりだろうか。いざというときのために、人里の診療所の心当たりを作っておくのは悪くない。
 
 と、思ったのだが。
 その答えは予想外すぎる大変宜しくないものだった。
 
「稗田家の客間よ」

 と、八意女史の言葉が終わる前にカーテンが勢いよく開く。
 そこには稗田家の使用人と、僕をここまで追い込んだ阿求の姿があった。
 
「では行きましょうか霖之助さん。懇切丁寧誠心誠意を込めて全力で看護いたしますので。いえいえ、ご遠慮なさらないで下さい貴方の怪我は私のせいですのでせめてものお詫びをさせてください」

「拒否させてくれ」

「そんなことをすれば稗田家の名に傷がつきますから。どうぞ貴方は心ゆくまで傷を癒していって下さいね。それでは八意先生どうもありがとうございました。ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」

「いえいえどうぞごゆっくり」

 八意女史!?
 これはどういうことかと聞く前に、僕は稗田家の使用人に両脇を抑えられそのまま持ち上げられる。抵抗しようにも思うように力が入らない。
 
「患者には静養してもらいたいじゃない? 特別に筋弛緩剤をご用意してみました。貴方には効き目がないかなって心配したんだけどちゃんと効いたみたいね」

「お気遣いどうもありがとうございます、八意先生」

「いいのよ。私は怪我人、病人の味方をするのがお仕事だもの」

 待て。
 明らかに僕を売ってるだろうそれ。
 
 抗議を口にしたいのだが、どうにも口が動かなくなってきた。
 先程の筋弛緩剤とやらが有効に作用し始めて来たようである。
 
 薬を盛って、僕を売るとはどういうことだそこの医者。
 
「それじゃお大事にね」



 嫌だ。


 
 
 誰か。




 
 
 助けて。
 
 
 
 
 
 
 
 そうして僕は稗田家に引き取られ、隙を見て逃げ出すまでの三日の間、逗留するハメになった。その三日間はまさに地獄のような日々であったのだが思い出したくもない。
 


 教訓。
 
 
 ──例え冗談でも、悪戯目的で女子に抱きつくものではない。
 
 
 それが僕の今回学んだ、人生における大切なことの一つである。
 
 
 
 さらに、この話にはもう一つのオチがついている。
 今から示すので是非思い返してみて欲しい。
 
 
 僕は良を手放し、涼を求めた。
 
 その結果として猟に巡り会い、療を与えられた。
 
 
 
 実に詐欺まがいのひどい等価交換である。
 
 世とはまさに皮肉の坩堝ではないかと思いたくなる。
 だが、人生は多分そんなものでできているのだろう。
 
 
 まったく、やれやれだ。
 
 
 
                                        ──END








と、いうことでいかがだったでしょうか。

ええ。

はい。


デレ阿求さんでしたね。

見事にピッチャー返ししやがった駄眼鏡いましたけど。


こうも難攻不落ですと阿求さんでなくとも殴りたくなるとは思います。

はい。



と、いうわけで今回のお話。
愉しんでいただければ幸いに存じます。

それではまた次回の更新にてお会いいたしましょう! したらな!!

なお、WEB拍手返信コーナーは勿論ご用意しておりますのでよろしければごらんくださいませ!









<WEB拍手返信コーナー>

いつもありがとうございます!

皆様のおかげで続いておりますこのコーナー!


それでは早速返信とな、とな?


>新刊楽しく読ませて頂きました。阿求さんが楽しそうでしたが~


どうもお買い上げありがとうございます!!
そう、ぼっち街道まっしぐらの茨華仙さんをどうぞよろしくということでひとつ。

きっとあのひと、プライベートでは寂しい人だと思うのです。

なお、青娥さんはなんだかお知り合いの方と話してて、
「あいつ八意先生系の清楚ビッチでは?」
という不可思議な共通見解が生まれつつあります。

いいですよね、清楚ビッチ。
気を抜かれると毒殺とかされそうなあたり。



と、いうわけで今回はこの辺で失礼いたします。


したらな!!

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プロフィール

yamoto

Author:yamoto
職業:無職・もしくは白血病患者
趣味:落書きと妄想
メアド:yamoto84@hotmail.com

行き当たりばったりを極めすぎてなんだか変な病気になったようです。
性病とかじゃあないあたり、とても人間性が出てると思います。

現在都心から、愛媛県へ連れ戻された模様。



なお、バナーもできましたので、リンクを張られるさいはこちらをご利用ください。 エロ絵もあるので18歳未満の立ち入りを避けるべく、リンクはトップページに張ってくださいませ。

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